最終更新日:2024年07月19日
工場の老朽化は、多くの製造現場が直面する課題です。
今の工場で継続して操業することが難しくなった場合、移転と建て替えのどちらが良いのでしょうか。
このコラムでは、工場の建て替えのメリット、具体的な手順、移転を含めた事前準備について解説します。
住宅地にある老朽工場は建て替えするべきか?
工場の老朽化は、生産能力の低下やコストの増加など、さまざまな問題を引き起こします。
ここでは、工場の建て替えを迷った際に知っておきたいポイントをお伝えします。
老朽化した工場が抱える問題点
老朽化した工場が抱える問題として代表的なのが、設備の非効率性による生産性の低下です。
この点は製品の価格面にも影響してくるため、早急に解決しなければなりません。
建物の老朽化による安全性の懸念や、エネルギー効率の悪さによるコストの増加も重大です。
こうした課題を抱えたまま操業を続けると、競合他社との競争力の低下にもつながります。
建て替え・移転を検討すべきタイミング
建て替え・移転すべきタイミングは企業運営の状況や現場の状態によって異なりますが、以下のようにいくつか目安はあります。
- ・建築後30年以上経過している
- ・年間修繕費が増加傾向にある
- ・新しい生産設備の導入が困難になっている
こうした状況に当てはまるのであれば、建て替えや移転に向けて徐々に準備を始めても良いでしょう。
住宅地の老朽工場への建て替え・移転で懸念すべき問題とは?
住宅地の老朽工場の建て替え・移転を考える時には、「住宅地エリア」と「老朽化した工場」という2つのポイントからリスク分析などをする必要があります。
老朽化した工場は基本的に、「修繕をしてそのまま同じ施設を使い続ける」もしくは「移転をする」という2つの選択肢からいずれかを選ぶのが一般的です。
しかしこの工場が住宅地という特殊な環境に建てられている場合は、修繕もしくは移転によって生じるさまざまなリスクをイメージしておかなければなりません。
まず住宅地の中にポツンと建てられた工場には、生産設備の買い替えなどを検討していても、敷地面積を広げにくい問題があります。
また近隣に暮らす住民の多くがその工場で働いている場合は、マイカーがなければ通勤できないような環境への移転により人材面での問題が出てくる可能性は非常に高いと言えるでしょう。
こうした形で老朽化した古い工場への対応に立地環境が大きな影響をもたらすことを考えると、新築工事を行うときには事業拡大や老朽化といった将来的に生じる可能性の高い問題を想定しておく必要があると言えそうです。
おすすめは同一沿線の地価の安い工業団地内に工場の移転
このように多くの問題を抱えた工場においておすすめの選択肢となるのが、同一沿線の地価の安い工業団地内に工場の移転をするという方法です。
工場移転によって空いた土地は、マンション用地として効率よく売却ができます。
また同一沿線内であれば、今まで工場で働いていた徒歩通勤の従業員に対しても、駅からシャトルバスを出すなどの対応でより良い人材流出へのブレーキをかけやすいと言えそうです。
ちなみに工場の修繕や移転をする時には、今稼働しているラインを一時的に中断させるかといった判断も行う必要があります。
しかし同一沿線内にある場所に移転先となる新工場を建設すれば、旧工場で生産を続けながらも新しい体制で運営をしていく準備もスムーズにできると言えそうです。
またこうした形で納品数にも影響が出やすいラインを止める必要のある移転や改修工事を検討する場合は、早めに工場倉庫などの設計施工を得意とする専門店に相談をしておく必要があると言えるでしょう。
工場建て替え・移転実施のプロセス
工場の建て替えや移転は、慎重に計画し、確実に行うことが大切です。具体的にどのように進めるべきか、手順を紹介します。
現状分析と将来計画の策定
まずは、現在の生産量、コスト、従業員数などを精査しどのような工場にしたいのか明確にします。
同時に、将来的な事業計画と整合性が取れているかも確認しましょう。
例えば、生産量の増加や新製品の導入を計画している場合、それに対応できる設備や空間が必要です。
「生産効率を30%向上させる」「エネルギーコストを20%削減する」といった具体的な数値目標を設定しましょう。
建て替え計画の立案
次に、建て替えの計画を立案します。
まず予算を設定しますが、これには建物の規模や仕様、設備の内容を考慮する必要があります。
予算が決まったら、準備期間から完成までの具体的なスケジュールを立ててみてください。
また、工場の建築には建築確認申請や工場立地法に基づく届出など、各種許認可の手続きも必要となります。
このタイミングで「どのような手続きが必要なのか」「自社で手続きが必要か」を整理しておきましょう。
建て替え工事中の操業継続方法
工事中も生産を継続する方法はいくつかあります。
おおむね、以下の3つが選択肢となるでしょう。
- ・工場を稼働させつつ段階的に建て替える
- ・近隣に仮設工場を設置して操業を継続する
- ・他社に生産を一時的に委託する
委託を行う場合、製造現場に自社の目が届かない場合もあります。
顧客の信頼を損ねないよう、品質管理には十分注意が必要です。
工場移転・建て替えのために必要な事前準備
工場の移転や建て替えを本格的に検討する場合、事前準備としては何が必要なのでしょうか。
スムーズに移転や建て替えができるよう、いつまでに何が必要かはあらかじめ理解しておきましょう。
詳しく紹介します。
工場移転・建て替えのための資金調達
工場の移転や建て替えには相応のコストがかかります。
- ・土地取得費
- ・建設費
- ・設備移転費
- ・新規設備導入費
といった費用が発生するため、必要な資金が確保できるか慎重に検討します。
自己資金だけでなく、銀行融資や補助金の活用も可能です。
活用できる補助金の例としては「地域未来投資促進法に基づく支援措置」や「事業再構築補助金」、その他各自治体の企業立地促進補助金などがあります。
工場移転や拡張のための土地探し
工場用地を探すのは、住宅用地を探すのとはわけが違います。
工業地域や準工業地域など用途地域に適合しているかの確認が必要ですし、操業に耐えうる電力や水道などのインフラが整備されているか、高速道路や港湾へのアクセスが良いかなども重要です。
また、土壌汚染の有無、将来的な工場拡張は可能か、地域住民との軋轢を生む恐れがないかなど、さまざまな条件があります。
土地探しを自社で行うのは現実的でないことも多いため、工場専門の不動産業者の活用や自治体の企業誘致窓口の利用など、外部の専門家や窓口への相談も検討してみましょう。
工場の建て替えにともなう従業員への対応と新規採用計画
従業員への対応も忘れてはいけません。
移転や建て替えに関する情報は早めに共有し、説明の場を設けることで不安を解消しましょう。
必要であれば、シャトルバスの運行や住宅手当の導入を検討するなど、引き続き勤務しやすい環境作りが大切です。
新工場の生産能力に合わせて、新規採用が必要になる場合もあります。
地元の高校・大学やハローワークなどと連携し、人材を確保できないか考えてみてください。
建て替え・移転にともなう従業員の教育・訓練計画も重要です。
新設備の操作方法や新しい生産システムに対応するための研修、安全衛生教育の見直しを実施し、現場スタッフが新たな工場に早く慣れるよう支援しましょう。
工場の移転・建て替えはSAWAMURAにご相談ください
当社は、工場や倉庫を専門に改修・リフォームを手がける会社です。
「移転・リフォームがしたいけれど、何から手を付けるべきか分からない」こうしたお客様に向けて、計画の立案から資金調達のアドバイス、土地探し、施工まで丸ごとのサポートを提供しています。
老朽化や傷みでお悩みのお客様、ぜひお困りごとをお聞かせください。
参考までに、当社にお任せいただいたお客様の例をご紹介します。
CASE1.株式会社ダイセン工業
老朽化した倉庫のリニューアルをご依頼いただきました。
大型リフォームでしたが、現行法に適合するよう施工を行い、新築同様に生まれ変わっています。
CASE2.株式会社池田製作所
樹脂加工や精密治工具製作を行う会社です。
工場のリノベーションをご依頼いただき、使いやすくモダンな内装に仕上げました。
CASE3.株式会社ホリゾン
「工場見学ができる現場に」とご依頼をいただき、事務所の改修を、設計から施工までお任せいただきました。