最終更新日:2024年11月18日
工場や倉庫の屋根材を選ぶ際は、用途や環境条件に応じた適切な判断が重要です。この記事では、波板スレートと折板屋根の特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。
それぞれの屋根材には、耐久性、断熱性、遮音性など異なる強みがあり、選択次第で施設の維持管理やコストにも大きな影響を及ぼします。
建物の用途や気候条件に応じた最適な屋根材の選択が、快適な作業環境の維持につながります。
工場・倉庫の屋根材①波板スレート
波板スレートは、セメントと繊維を混ぜて波形に成形した屋根材で、古くから工場や倉庫の屋根に利用されてきました。特に耐火性・断熱性に優れており、長期的に使用される屋根材として人気があります。
特徴
波板スレートは大きな波の形状をした「大波スレート」と、比較的細かい波の「小波スレート」に分けられます。工場や倉庫の屋根には大波スレートが主に使用され、小波スレートは外壁材として利用されるケースが多く見られます。
メリット
工場や倉庫の屋根に使用される波板スレートには、長期的な使用や費用対効果の面で多くのメリットがあります。波板スレートのメリットについて詳しく見ていきましょう。
高い耐久性
波板スレートは25年以上の耐用年数を持つ屋根材です。そのため、頻繁なメンテナンスが不要で、長期的にコストを抑えることができます。たとえば、食品工場や物流倉庫のように大規模施設では、定期的な屋根のメンテナンスを減らすことで、運営コストを削減し、管理が効率化されます。スレート屋根のボルト固定部分に防錆処理を施すことで、さらに耐久性を向上させることも可能です。
耐火性に優れている
波板スレートは法定不燃材料に分類されており、火災に対して非常に強い耐火性を誇ります。これは、化学薬品を扱う工場や電気機器を多く使用する施設で特に重要です。たとえば、製造工場で火災が発生した場合でも、スレート屋根は燃え広がるリスクを抑え、被害の拡大を防ぐ役割を果たします。また、他の耐火構造と組み合わせることで、より高い安全性が確保できます。
遮音性が高い
波板スレートは、外部からの音の侵入や雨音を効果的に遮断するため、静かな環境を維持するのに適しています。たとえば、倉庫内での業務や工場での生産活動中に、外部からの騒音が少ない環境を保つことで、作業効率が向上します。また、住宅街に近接した施設でも、外からの音漏れを抑え、周囲への騒音の影響を最小限にすることができます。
コスト面で有利
波板スレートは、他の屋根材と比べて施工費や材料費が比較的安価であるため、導入時のコストを抑えられます。例えば、古いスレート屋根にひび割れが生じた場合でも、同じスレート材で張り替えることで、一括損金として税制上の優遇を受けることが可能です。また、メンテナンスの頻度が少ないことから、長期的に見てもコストパフォーマンスに優れています。
デメリット
波板スレートには優れた性能がある一方で、いくつかのデメリットも存在します。それぞれの課題について詳しく解説します。
汚れが付きやすい
波板スレートは表面が粗いため、砂埃や土埃が溜まりやすく、特に工場や倉庫が交通量の多い地域や風の強い場所にある場合は、汚れの蓄積が問題となりやすいです。たとえば、食品加工工場や物流施設では、屋根の汚れが放置されると見た目の美観が損なわれ、企業イメージにも悪影響を与えることがあります。定期的な清掃や高圧洗浄によるメンテナンスが必要ですが、広範囲にわたる屋根ではこれがコストと労力の負担となることもあります。
アスベスト問題
2004年以前に製造された波板スレートには、健康に悪影響を与えるアスベストが含まれている可能性があります。古い工場を解体する際や屋根を修理する場合、アスベストを含む廃材は特別管理産業廃棄物となる為、処分する為に特別な許可や高額な費用が必要となります。日本国内の法律では、アスベストを含む材料を撤去する際、専用の防塵マスクや飛散防止のために湿潤等が義務付けられています。
工場・倉庫の屋根材②折板屋根
折板屋根は金属をジグザグに折り曲げた形状で、強度と軽量性を兼ね備えた屋根材です。大規模施設や体育館などでも利用されており、特に広い面積の屋根に適しています。特徴やメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
特徴
折板屋根には主にガルバリウム鋼板が使われることが多く、錆びにくく長寿命であることが特徴です。また、鉄骨に直接取り付けることができるため、工期の短縮が期待できます。
メリット
折板屋根のメリットは次のとおりです。
高い耐久性
折板屋根は、金属の折り目が強度を高める設計になっており、軽量でありながら強い構造を持っています。たとえば、風が強い地域や台風の多い地域においても、耐風性が求められる工場や倉庫でその強度が評価されています。また、ガルバリウム鋼板などのサビに強い素材が使用されるため、数十年単位で使える耐久性を発揮します。
施工コストが安い
折板屋根は、鉄骨に直接取り付けられるため、通常必要な野地板やルーフィングといった下地材が不要です。このため、材料費や工期を大幅に削減でき、施工コストが抑えられます。たとえば、物流倉庫の拡張工事など、大規模な屋根の設置にも短期間で対応できるため、事業への影響を最小限に抑えることができます。
耐水性に優れている
折板屋根は、波型のデザインにより水はけが良く、雨水が溜まるリスクが低減されます。この形状により、傾斜の少ない広い屋根でも効率的に雨水を排出できるため、雨漏りのリスクが大幅に減少します。たとえば、食品工場などでは雨漏りが製品の品質に影響を与えるため、耐水性の高い折板屋根が選ばれることが多いです。
デメリット
続いて、折板屋根のデメリットについて見ていきましょう。
断熱性・遮熱性が低い
折板屋根は、空気層を持たない構造のため、外気の影響を受けやすくなります。夏場は熱気が室内にこもりやすく、冬場は冷気がそのまま伝わるため、空調効率が悪化する場合があります。たとえば、製造工場では、冷暖房コストが増加するため、断熱材の追加施工が必要になることもあります。
遮音性が低い
折板屋根は、金属製の一枚板で構成されているため、雨音や外部の騒音を室内に伝えやすい傾向があります。たとえば、工場内での会話が、大雨の日には騒音で遮られることもあり、作業効率が低下するケースが報告されています。このため、遮音対策として断熱材や吸音パネルの導入が検討されることもあります。
サビのリスク
折板屋根の金属素材はサビに強いとはいえ、完全に防げるわけではありません。特に、ボルトで固定する部分がサビやすく、そのサビが広がると、屋根全体に悪影響を与えることがあります。たとえば、沿岸部の工場では、塩害によるサビの進行が早いため、定期的なメンテナンスが欠かせません。サビを放置すると、雨漏りの原因となるため注意が必要です。
まとめ
工場や倉庫の屋根材には、それぞれ特徴と利点・欠点があります。波板スレートは耐火性・遮音性に優れ、折板屋根は軽量で施工が簡単です。施設の目的や使用環境に合わせた最適な屋根材を選ぶことで、長期的なコスト削減と快適な環境の維持が期待できます。
工場や倉庫の屋根材の張り替えを検討する際は、工場・倉庫の改修に精通した業者に相談することが大切です。滋賀・京都・福井で工場・倉庫の改修なら株式会社澤村にお任せください。