最終更新日:2024年03月18日
人体への悪影響があるとして、知られるようになってきたアスベスト。かつて、建物を建てる際に使われた物質ですが、さまざまな健康被害を引き起こすことが判明したことで、問題視されるようになった物質です。
近年はアスベストの危険性をふまえた建物の建設が進んでいるため、比較的新しい建物にアスベストの含有リスクはないとされています。
しかし、20世紀頃までは世界中でアスベストが建物に使われていたため、古い建物は要注意です。
そこで、今回はアスベストのリスクや、アスベストが含有している可能性のある建物の特徴、具体的なアスベスト対策などについて詳しく解説していきます。
アスベストにおけるリスクとは
建物の素材として用いられてきたアスベストは、「壁」「屋根」「天井」「床」「断熱材」「耐火材」など、使用される場所が多岐に渡ります。安価でありながら、耐久性が高いため世界中で重宝されてきたのです。
しかし、アスベストは老朽化などに伴って飛散しやすい物質でもあります。アスベストの粉塵は目視では確認が難しく、空気中に漂っていても気が付くことができません。そのため、アスベストを無意識に吸い込んでしまうケースがほとんどなのです。
結果的に、知らないうちにアスベストが肺に蓄積してしまい、健康被害を及ぼすのです。そのうえ、一度蓄積したアスベストは体外へ排出されないため、どんどん蓄積していってしまいます。
最終的には肺がんや悪性中皮腫、石綿肺などを引き起こすリスクを高めます。そのうえ、アスベストは潜伏期間が長いうえに、明確な症状が出てくるまでに期間がかかるのが特徴です。咳や呼吸困難などの症状が現れる頃には、すでに多くのアスベストが蓄積している状態であることも少なくありません。
ちなみに、現在は、アスベストを使った建材を作ることは禁止されている状況です。また、アスベストを含む建物を解体したり、改修したりする際にも届け出が必要であるため、個人の判断で対応することはできません。
アスベストの深刻な問題をふまえ、厳しく規制が整備されている状況です。
アスベスト含有の可能性があるのはどんな建物?
工場を経営している方や、担当者にとって「自分の管理している工場にアスベストが含まれているのか」は気になるところではないでしょうか。
アスベスト含有の可能性がある建物として、判断基準となるのが築年数です。1975年にアスベストの含有率が5%以上の吹き付け作業が禁止され、1995年にはさらに厳しくなりアスベストの含有率1%以上の吹き付け作業が禁止されました。
2004年には、含有量が1%を満たない白石綿意外の製造及び輸入や提供などを前面禁止として規制が設けられ、2006年以降はさらに厳しく「アスベスト含有量0.1%」を越えるものを製造したり、輸入や譲渡、使用したりすることが禁止されました。
1975年以降に徐々にアスベストの扱いについて厳しい規制が進んできているため、ご自身の持つ工場の築年数と照らし合わせてみることをおすすめします。
仮に1975年以前の築年数である場合、アスベストが使われている可能性は高いと考えられるでしょう。
逆に2004年以降に建てられた工場であれば、建物にアスベストが使われている可能性は低いと判断できます。
工場を入手した際の契約書などを確認し、築年数を調べたうえでアスベストの使用の可能性をチェックしてみてください。
アスベストにおける対策とは
仮にアスベストが使われている可能性が高いと判断された場合、どのような対策を施せばいいのでしょうか。
ここからは、アスベストにおける具体的な対策について、詳しく解説していきます。
除去工法
アスベストの除去効果が期待されている薬剤・道具を使用した対策です。とくに、建物を解体する際に活用されます。ただし、除去工法は周囲にアスベストが飛散しやすいため必要に応じて養生を行って周囲に配慮しなければなりません。
封じ込め工法
アスベストが使われている箇所に薬剤を塗布していくのが封じ込め工法の特徴です。アスベストを除去するのではなく、上から封じ込めるようなイメージの対策法です。薬剤で封じ込めることで、アスベストの飛散を防ぎ吸い込んでしまうリスクを下げることができます。
囲い込み工法
すでにアスベストが露出してしまっている場合には、別の建材で防ぐような形で対策をします。仮に、壁にアスベストが使われているとしたら、そのうえから別の壁をカバー工法のようなスタイルで設置します。
囲い込み工法ならアスベストの飛散を防ぎやすくなり、吸い込みリスクを軽減できるでしょう。
おわりに
本ページでは、アスベストにおける健康リスクや、アスベストが含有されている可能性のある建物、アスベストが使われている建物の対策などについて解説しました。
アスベストは人体に深刻な影響をもたらすリスクのある物質です。古い工場であればアスベストが使われている可能性もあるため、工場の経営者や管理担当者はきちんと確認しておく必要があります。
今回解説した内容を参考にしながら、アスベストへの理解を深め、適切な工場経営を進めていきましょう。