こんにちは、ライターの福馬です。
今回はSAWAMURAの取り組みの中でも、なかなか表には出ない企業の裏側のお話。インナーコミュニケーションツール「社内報」についてご紹介します。
社内報といえば、社員に向けて経営ビジョンやブランドへの理解、社員同士の交流を促すツールですが、近年は速報性や検索性などを求めてWEB化を進める企業や、顧客や消費者に向けて作る企業もあるそうです。
その中で、あえて読者を社員に限定して、紙での紙面作りをしているSAWAMURA。その背景や意図とは? いったいどんな内容なのか? デザインへのこだわりや使い方なども含めて、編集長の和田さんに伺ってきました。
和田さん
ブランド推進室 広報/採用企画
2020年にSAWAMURA入社。ブランド推進室に所属し、広報や採用の業務に携わる傍ら、社内報の編集長として企画・進行管理から取材・執筆まで行っている。
—今日はよろしくお願いします。少し緊張されてますか?
和田 はい…。普段は取材をする側で、取材されることにあまり慣れてなくて(笑)。
—今回は社内報の取り組みをご紹介するのですが、和田さんが関わったのはいつ頃からですか?
和田 入社して1年目の夏からなので、2020年ですね。
—関わられた当時と今では紙面の体裁自体が大きく違いますね。何があったのですか?
和田 当時はA4片面のみの瓦版のような感じで毎月発行していました。内容も竣工報告やイベントの告知など、ニュース的な見出しが中心。社員向けと言いつつ、法人のお客様にもお渡しする営業ツールのようにもなっていました。2019年のリブランディングから1年くらいはそれを継続していたのですが、「もっとブランドづくりや社内コミュニケーションに役立つものにできないか?」ということで社内報をコンセプトから見直すことになったんです。
—なるほど。
旧社内報のデザイン
和田 報告や告知中心だった内容から、もっとプロジェクトの意義や社員の思いを深く紹介しようと。ただこれまでのように、お客様へ渡すことも意識した紙面になると、表面的で内容が薄くなるというか。本当は紹介したい情報を掲載しにくくなってしまう。そこから「社内報ってやっぱり社員に読んでもらうものだよね」と、そもそもの目的に立ち返ったんです。
—速報性よりも、仕事の意義や思いに重点を置いたんですね。
和田 そうですね。だから社内報に関しては「遅くていいから、深く知れる」という方針にしています。速報性の高いニュースは社内のチャットに任せて、その代わりに社内報ではしっかり取材をして、仕事の背景や人の思いを知れるものに。発行頻度も月1から3ヶ月に1回に変わった分、ページ数や文字数も以前よりかなり増えています。
—近年では社内報をWEB化する企業も増えていますが。
和田 「WEBで発信した方がいいのでは?」という声も確かにありました。会社全体としてはデジタル化が進んでいますが、社内報だけは手に取ってゆっくり読んでもらいたいので紙の冊子にこだわっています。
— そういう背景があったんですね。
和田 社員の中にはWEBに慣れていない方もいるので、ちゃんと全員の手に行き届いて落ち着いて読んでほしい。「社員へのお手紙」のような存在になればと思い、タイトルも『S.Letter』に変えました。
— かなり読み応えのあるお手紙ですね。
和田 文字数も多いので読み切れない方もいるかもしれませんが、知りたい人にはちゃんと伝わる濃い内容です。読んで満足できる情報を届けられるようにブランド推進室のみんなで一生懸命作っています。
— 和田さんは編集長をされているそうですが、どんな仕事内容ですか?
和田 本当に編集長と名乗っていいのか…。私は全体の企画、進行管理、担当の割り振り、外部のデザイナーへの発注などをしています。
— 立派に編集長をされていると思いますが。
和田 そうなんですかね(笑)。先輩方にサポートしていただきながら、なんとかやっています。
— では社内報の中身について伺います。コーナー自体は毎号決まっているのですか?
和田 毎号同じ構成ではありませんが、通常号ですと巻頭に『SAWAMURAとわたし』という勤続20~30年くらいのベテラン社員にSAWAMURAとの歴史を語ってもらうインタビューページがあります。他には各部署の建築案件を紹介する『プロジェクトページ』や、『社内の取り組み』、会社に新しい仕組みを導入した立役者を紹介する『挑戦する人』などもあります。
— 私が気になったのは時々掲載されている『ブランド認知度調査』です。これはどういった意図で?
和田 SAWAMURAでは「高島市での認知度70%を目指す」といった感じで、社長から今年の目標についての発信があります。その時は社員それぞれノートにメモをして心に刻んだつもりでも、全社目標って実はすぐに忘れてしまうと思うんです。
— はい。すぐに忘れてしまいます(笑)。
和田 ですよね。だから会社が立てた目標に対して、今現在自分たちがどのくらいの位置にいるのか。認知度に限らず、社内報で定期的に進捗報告をして、全社員に目標への意識を持ってもらえるようにしています。
目標に対する現在位置を共有する『ブランド認知度調査』
— なるほど。紙面のデザインも以前と比べ、かなり印象が変わりましたね。何か方針はあるのですか?
和田 社内報はインタビュー記事など、文字要素の多い冊子になっています。文章を読むのが苦手な方もいらっしゃると思うので、パッと見て興味を持ってもらえるように、スッキリとしながらも、親しみやすいポップなデザインにしています。
— プロジェクトごとに関わった社員の顔写真が載っているのもいいですね。
和田 プロジェクトを紹介する時は、企画・運営に関わる社員の顔写真と所属部署を掲載するようにしています。SAWAMURAでは委員会制度というものを導入していて、いろいろな部署から集まった5~6人のチームで企画やプロジェクトを運営していくことが多いんです。
— 部署間の壁が少ないんですね。
和田 今は社員数も増えてきてプロジェクトの数もたくさんあり、誰が何をやっていたかわかりにくくなりがちです。なので、この人がこういう役割で取り組んでいる、ということが社内報を見ればわかるようにしています。
プロジェクトを紹介するページの一部。メンバーや役割は必ず記載している。
— ちなみに、和田さんお気に入りのコーナーは?
和田 『SAWAMURAとわたし』ですね。
SAWAMURAとともに歩んできたベテラン社員にインタビューする『SAWAMURAとわたし』
— 確かに毎回巻頭にありますし、こだわりを感じます。
和田 私が入社するより前の会社のことをいろいろ知ることができますし、仕事への考え方や取り組み方に毎回驚かされます。普段、ベテラン社員の方と接する機会が少ないので取材を通して人柄を知れますし、意外な一面を見ることができ楽しいですね。
— 私も何度か取材をさせていただきました。バブル期のお話やPCのない時代の仕事の仕方などとても興味深いです。
和田 会社としてはリブランディング後の新しいことに目がいきがちですが、やっぱり長年会社を支えてきた方がいるからこそ今があるんだなと取材の度に感じますね。
— そんな思い入れのあるコーナーの制作に関わらせていただいて光栄です。
— 完成した社内報は、どのようにして社員の手に渡っているのですか?
和田 できるだけ、各部署に手渡しでお渡ししています。
— えっ、手渡しで!?
和田 渡すだけですけど、渡す時はその部署の方が掲載されていたら「○○さん載っているんですよ!」と声を掛けるようにしています。それで部署内でのコミュニケーションが増えたらいいなと思って。
— 毎号アンケートもされているんですよね。どんな反応ですか?
和田 最近は「こんな企画やってみてはどうですか?」と、アンケートの中で提案してくれる方もいました。でも最初の頃は否定的な声も…。
— ちなみにどんな声ですか?
和田 「こんなに労力をかけて社内のツールを作るものなの?」といったコメントもリニューアル後はありましたね。
— 確かに直接売上げにつながらないという意味では、そういった声もわからなくはないです。
和田 それでもめげずに作り続けていく内に、私たちの思いが伝わってきたのか前向きな声をいただけるようになってきました。
— これからの展望や現状の課題を教えてください。
和田 理想としては社内報を読んだ社員が、掲載されている方と積極的に交流して、そこから新しいプロジェクトが生まれたらといいなと思っています。
— 読んで終わりではなく、コミュニケーションを促し、さらにプロジェクトへ。なかなか壮大ですね。
和田 だから、社内報でもっとコミュニケーションを誘導するというか。意図的に生まれる仕組みができたらと感じています。それが今の課題ですね。
— 課題解決のために取り組んでいることはありますか?
和田 会社全体で社内報をもっと活用していけるように取り組んでいます。
— というと?
和田 実は今、各部署の課長に部署内で社内報を有効活用してくださいとお願いしています。例えば、みんなで読む時間を作っていただくとか、社内報の企画を提案してもらうとか、発信したい取り組みを教えていただくとか。企画に会社全体を巻き込むことで、さらにコミュニケーションが生まれていけばと考えています。
— 社員全員が関わる社内報作り。SAWAMURAさんらしいと思います。
和田 建設業というのは現場がたくさんあって、そこで働いている方は会社との接点自体が普段は少ないんです。特に法人の建築を担当されている方は、現場事務所でずっと仕事をしています。それでも、例えば私たちが取材をさせてもらうことで会社とのつながりを感じてもらう。これも社内報づくりの大切な役割だと思っています。
— 社員一人ひとりの目線に立った視点。さすが編集長ですね。
和田 私たちは建設会社なので、建設会社らしさにもこだわって社内報の価値を更に社内に浸透させていきたいです。突拍子もないことを言うと、社内報にAR(拡張現実)を使って竣工した建物を再現してみるとか。
— それはすごいですね。紙を折ると建物になるような付録もできそうですね。
和田 付録もいいですね!そのアイデアいただきます(笑)。
— ぜひぜひ。これからさらに魅力的な社内報になることを期待しています。今日は、お話ありがとうございました。
リブランディングで新しいことにどんどん挑戦するSAWAMURAの社内報が、「社員に宛てたお手紙」という温かみを感じるコンセプトなのは驚きでした。読者である社員一人ひとりに寄り添った社内報。みなさんにもぜひ一度読んでいただきたいです。法人の方向けになりますが、会社見学ツアーの特典としてプレゼントされているそうなので、興味のある方はぜひ申し込んでみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
福馬俊太郎 滋賀県高島市在住。フリーの編集・ライターとして活動中。SAWAMURA社内報の取材・執筆にも携わる。 |
Interview&Text::福馬俊太郎/Edit:SAWAMURA PRESS編集部