SAWAMURAのブランドミッション「きっかけを創造する」をもとに、私たちが共感する企業や人に、地域に新たな「きっかけ」を生み出す活動・ビジョンについてお話を伺うコラムきっかけStories。
今回は、2020年に野洲工場を竣工した日野精機様にインタビュー。竣工後にどのような変化が起きたのか。さらなる将来への展望とは。
発想無限大を意味する「Infinity of Ideas」を経営理念に、新たな事業に挑戦し続ける今の想いを語っていただきました。
インタビューに答えてくださった方々
日野精機株式会社
福田 弘 さん 代表取締役社長
安藤 泰己 さん 総務部部長
福田 幸司 さん 営業・業務統括本部課長
― 「工場につきまとう”3K”のイメージを変える」というコンセプトのもと、2020年に野洲工場が竣工しました。竣工から3年。実際に運営するなかで、どのような変化がありましたか?
社長:竣工後の反響は非常に大きかったと感じています。振り返ってみると、野洲工場を建設しようとしたら間もなくコロナ禍になってしまったんですよね。このまま建設を進めるのか、見送るのかという迷いがなかったといえば嘘になります。しかしコロナ後の材料費高騰は予想できていたので、やはり今しかないと思い決断したことを覚えています。
福田さん:竣工後にまず嬉しく感じたのは、想像以上のお客様が電話をかけてきてくださって、いろんなお話ができたこと。あの時(コロナ禍でも)建設を決断できたからこそ、今があるんだと実感しますね。「3Kのイメージを変える」というのは、従来の「きつい・きたない・きけん」というイメージを、「きれい・かっこいい・こだわりをもつ」に変えていこうというものなんです。たとえば「きれい」の部分でいくと、作業環境がきれいなまま維持しやすくなりました。それは、清掃しやすい広めの作業スペースになったからというのはもちろんですが、社員の気持ち的にも「きれいに維持していきたい」というマインドが根付いたからだと思うんです。こういったことは、建物が新しくなったことによる、良い変化だと思いますね。
安藤さん:実際にお客様をご案内する機会が増えたから、いい意味で「見られている」という意識が身についたのかもしれませんね。相手にどう見えているかを一人ひとりが意識することは、日野精機のブランディングにも非常に良い影響を与えます。
― 採用に関する変化についてはいかがでしょうか?
社長:工場で働く選択肢はなかったけど「野洲工場なら働きたい」という求職者も多く、「工場で働く」イメージそのものを変えられているのではないかと感じることもあります。
福田さん:建物が道路沿いにあるという、アクセスの良さもあいまってか、地元の若者の応募もありました。野洲工場だから来てくれたという人もいます。それって、建物が採用活動に効果的に機能しているということ。そういったことも、今まで実感したことのなかった大きな変化ですね。
安藤さん:電車通勤の社員が仕事後に快適に帰れるようシャワー室を完備するなど、さまざまな工夫をした甲斐がありました。「働きやすい工場」にしたいという建設当初からのコンセプトが随所に現れ、良い成果をもたらしています。
福田さん:高断熱・高気密、スポットクーラー、全館空調など、作業環境をよくする努力は惜しまず行っていますよね。福利厚生としても整えていこうという設計です。おかげさまで今のところ作業環境について「しんどいわ」という声はないですね。とはいえ、工場ができたから終わりではなく、働き方については常にアップデートさせていく必要があります。作業環境をよりよくし続けることでパフォーマンスがあがれば、お客様の満足度も上がり、売上も上がります。そして従業員にも還せる。好転的にまわっていくスタート地点が、野洲工場の竣工と位置付けることができますね。
― 野洲工場を稼働させてから新規のお取引も増えたとお聞きしました。
社長:野洲工場の竣工から3年経ちますが、売上は竣工前の111%と伸長しています。
安藤さん:野洲工場ができてからお取引がはじまったお客様もたくさんおられまして。お問い合わせのあったお客様には、まず工場をご案内することも多くあります。そうすることで当社のキャパシティ、生産能力を評価していただいたうえで受注できます。野洲工場はフロア周りの通路を広くとり、見学しやすい設計にしています。まさに、工場そのものが“営業マン”となってくれるわけです。
社長:生産の工程を順を追って見学できるようになっているので、お客様が必要とされる製品がどのようにつくられているのかイメージしやすくなっています。一つひとつの工程が見える化されており、私たちの保有能力をアピールできるのはこの工場ならではの大きなメリットです。
― 野洲工場竣工時に、これからは「自社で何ができるか」が重要とおっしゃっていました。その後、新たな取り組みはありましたでしょうか?
社長:まず前提として、一にも二にも「環境にやさしい企業であり続ける」こと。その上で日野精機で何ができるかを考えてきました。その答えの一つとなるのが、PLA樹脂を活用した製品づくりです。PLA樹脂というのは、トウモロコシとサトウキビでつくった環境にやさしいプラスティックのこと。これを材料に、たとえばベビー食器、マグカップ、ゴルフのティーなどを商品化しようという取り組みです。
安藤さん:一般的なプラスチックと違って、燃やしても大気中の二酸化炭素を増やさない植物由来のプラスチック。サステナブルな製品を開発し、日野精機でつくっていくことは、もちろん社会貢献につながるわけで。しかし、もうひとつ大切なのは、社員自身が「日野精機に勤めて、いいものをつくっているんだ」という誇りをもつことだと思うんです。一人ひとりの社員が、社会に貢献していることを実感できるものづくりをすること。野洲工場ができて、そういう取り組みがよりやりやすくなったと思います。
― 最後に、将来の展望をふまえて一言お願いします。
社長:経営理念の「Infinity of Ideas」は、「無限に広がる発想力でイノベーティブなものづくりに挑戦し続け、持続可能な社会づくりに貢献する」という想いを込めています。「うちにはやれないものはない」という気概をもって、今後もチャレンジしていきたいですね。日野精機がもともと有する技術じゃなくても、「いいやん!」と思えば柔軟に取り入れていく姿勢も大切にしながら、社会がよりよくなることを探していこうと思います。
安藤さん:野洲工場ができたことにより、取引先も増え、新事業への挑戦もできました。これからさらに野洲工場をフルに活用するために、新たな働き方の検討も進めているところです。あとはやっぱりPLA樹脂を使った自社商品の開発。これを若い社員たちとどんどん発展させていきたいですね。そんなチャレンジができるのも、このかっこいい工場があればこそ、とも言えるんですよね。
福田さん:今度やっていくPLA樹脂の自社商品開発は、安藤部長と私が中心となってどんどん世の中に発信し、社会に貢献していこうと、プロジェクトメンバーみんなで一丸となってやっています。私がお客様を案内するときに、日野工場と野洲工場の1日ツアーをよく開催するんです。そのときに決まって話すのが、「日野工場は、日野精機の歴史を語る工場です。野洲工場は、日野精機のこれからを創る工場です」ということ。日野精機が培ってきた技術や知識を、お客様には知っていただきたいし、若い社員にはつないでいきたい。そしてこれからも発揮していきたいという想いをお伝えするためです。また、野洲工場は竣工以来、環境への配慮を徹底しています。溶剤は絶対に流さない。PLA樹脂の自社商品開発も、その姿勢の上に立っているからこそ、従業員が「うちの会社って、社会の役に立ついい会社なんだな」って実感できると思うんです。みんなでやりがいをもって、日野精機を発展させていける環境を、これからもつくっていきたいと考えています。
Interview&Text: ふじわらゆうき/Edit:SAWAMURA PRESS編集部