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デザイン経営
2025.02.28
まちに暮らし、まちを楽しむ。マルシェから広がるまちづくりのカタチ【SAWAMURAマルシェ2024レポート】

「暮らしをゆたかにするきっかけ」が見つかる場所、として2020年から開催してきた『SAWAMURAマルシェ』。

2024年10月27日㈰に開催された第6回では、SAWAMURAが本社を置く高島市勝野(旧大溝地区、以降「大溝」。)のみなさんが主体となって開催される『大溝まちづくりマルシェ』と、湖西線開通50周年を迎えたJR西日本との共同企画『大溝ラリー(スタンプラリー)』も同時開催され、大溝地域が大いに盛り上がる1日となりました。

また当日は、近畿大学建築学部の宮部ゼミとSAWAMURAの共同プロジェクトの一環で、まちづくりに関するアンケート調査も実施しました。

 

今回のSAWAMURA PRESSは、前半では『SAWAMURAマルシェ』の様子を、後半ではSAWAMURAの考えるまちづくりやその取り組みについてご紹介します。

まちに人がいる状態を長期目標としたきっかけづくり

SAWAMURAが本社を置く滋賀県高島市は、県内でも特に空き家率が高く、空き家の利活用が課題となっている地域です。

創業以来、この地に本社を置く建設会社として、まちづくりや地域活性化に貢献するためには何ができるだろうか。そんな思いから、「まちに人がいる状態」を長期的に目指し、地域の魅力を伝えて、この街で暮らしたい人を増やすきっかけづくりができればとスタートしたのが、『SAWAMURAマルシェ』です。

毎年秋に開催される『SAWAMURAマルシェ』は、2000名近い来場者を記録するSAWAMURAの一大イベントです。毎回異なるテーマで開催されるSAWAMURAマルシェ、今回のテーマは「きづきあう」。地域の魅力にきづきあい、心ゆたかな関係をきずきあう、暮らしを彩るマルシェを目指して開催されました。

今回ご出店いただいた23店舗のお店の一部をご紹介します。

 

京都珈琲焙煎所 旅の音

SAWAMURAの本社横にある元自転車屋さんの建物を改装し、2024年11月にオープンしたワーキングスペース『Rin Takasima』。この日は、京都珈琲焙煎所 旅の音さんによる自家焙煎のコーヒーと、クラフトシロップ『Toulo』が販売されました。


マルシェ当日はまだオープン前ということもあり簡易的なブースとなりましたが、現在はRinTakashima内のコーヒースタンド『MAMEBACO』で、旅の音さんの美味しいコーヒーをお楽しみいただけます。

 

LAGO

琵琶湖の葦(ヨシ)で織り上げた、サステナブルな生地で作った服やバッグ、アクセサリーを取り扱うLAGOさん。ご夫婦で営んでおられるこちらのブランドは、奥様がアパレルのデザインと縫製を、旦那様がアクセサリー製作を担当されています。


琵琶湖に生息する葦は、成長した部分を刈り取ることで鳥類や魚貝の快適なすみかとなり、琵琶湖の持続性と環境保全に役立つそうです。

毎年刈り取られて処分される葦を有効活用し、和紙に加工してから糸にした「葦和紙糸」を織り込んで作られた服地は、通気性がよく肌触りのいい機能性の高さが特徴です。

 

Buna t’et’a

滋賀県内を中心に様々なイベントに出店されている人気のキッチンカー『Buna t’et’a(ブンナタッタ)』さん。

こだわりのスペシャルティーコーヒーをはじめ、滋賀にゆかりのある食材を使用した自家製シロップで作る爽やかなドリンクや美味しいサンドイッチを販売されています。


いちじくを丸々使った自家製いちじくビネガーソーダや、農家さんで収穫された『あいとうローゼル(ハイビスカス)』を使ったこの時期だけの自家製ローゼルティーなど、こだわりのメニューがたくさん。

 

近江高島駅前 子ども上棟体験ブース

JR近江高島駅前の広場では、家づくりに第一線で関わるSAWAMURA社員による子ども上棟体験ブースが。「仕事の魅力を発信したい」という想いから、出張出店に挑戦しました。

当日は、たくさんの子どもたちがミニ金づちで梁を叩く音が鳴り響き、盛況となりました。

また、大溝の街じゅうに設置されたJR西日本との共同企画『大溝ラリー(スタンプラリー)』のスタンプラリー台も、SAWAMURA社員による手作り。木の風合いを大切にした9つの台は、ひとつひとつ趣が異なります。


近畿大学建築学部宮部ゼミとの共同プロジェクトの一環で、来場された方々にアンケート調査を実施

SAWAMURA本社のある大溝地域を盛り上げていくことを目的に、私たちは約半年に渡って近畿大学建築学部・宮部教授の「建築都市再生デザイン研究室」との共同プロジェクトを進めてきました。

過去2回のプレ調査を経て、今回の本調査を実施。来場された方々に、「この地域にどのような施設や場所があればいいか」という質問に答えていただきました。

宮部教授が得意とされているのは、すでに出来上がっている建物や街全体の再生・リノベーション。

一般的に建築では、「リノベーション」という言葉は建物そのもの(ハード面)を指して使われることがほとんどですが、宮部教授は、使われていない建物や古くなった建物をリノベーションし、それが街や地域の小規模なエリアのなかで増えていくと、その場所で新しい活動をしたい人が街に集まり街全体のリノベーションになると考えておられます。

「建物だけをリノベーションしても、実は人は集まらないし、関心を示されないんです。そこにどういう活動が入るかによって巻き込まれていく人が変わり、そのエリアに徐々に人が集まり、住む人や働く人が増えます。ハード面(建物)だけでなくソフト面も含めて“まちづくり”として考えることが大切です


宮部 浩幸 さん
近畿大学建築学部教授。建築や都市の再生、リノベーションを専門とする。全国で開催されているリノベーションスクールでは、遊休不動産や空間を活かしたまちづくりを実践で学ぶスクールの講師も務める。

また、行政であれば空き家の再生、建設関係者であれば再開発、商店街の人はイベントや商品券を配るなどの商店街振興、社会学に関心のある人はコミュニティづくりをイメージするなど、同じ「まちづくり」でも取り組む人によってやることや考えていることは違う、と宮部教授は言います。

「単に“空き家を再生しよう”というだけではなく、この場所で何かをしたい人、目的を持って場所を探している人たちがいて、それを実現するツールとして空き家を使うことが、結果的に街の再生につながるんです」

「大溝に何がほしいですか?」アンケート調査の結果から見えたもの

過去2回の結果を踏まえ、写真や貼る位置を細かく調整したアンケートボード。子育て世代を中心に遊び場や公園が、全世帯を通して温浴施設に注目が高かったのがわかります。

他地域でも同様の調査を行ったご経験のある宮部教授ですが、地域によって必要とされているものに大きな差が出るのも面白いところなのだとか。

「例えばテレワークができる場所に注目が集まった地域もありましたが、この地域ではあまり注目されていないようにみえます。他地域に比べるとみなさん家も大きいですし、テレワークをするためにわざわざ自宅外にいく必要がないのかもしれませんね。しかし、カフェや本棚がたくさん並んだ写真はとても反応が多いので、人が集まる場所を求めている方は多いのかもしれません」

結果の分析はこれからですが、建設会社としてSAWAMURAがこの地域とどのように関わっていくべきか。そのヒントが導き出されることを楽しみにしています。

歴史的な街並みと伝統文化が残る大溝地区の可能性とポテンシャル

行政ではなく、SAWAMURAのような地域の企業がまちづくりに主体的に取り組むことを、宮部先生は「うまく考えられているなぁと思います」と評価されます。

「高島市は、大津や京都・大阪へ通勤する方の郊外住宅地となっています。郊外に家を買い、平日は時間をかけて都市部へ通勤するという戦後の日本で確立されたスタイルが成り立っている地域ですが、こうした地域は他にもたくさんあるので、いつか高島市の人気がなくなってしまったら、家を建てる人が減って建設会社として商売が成り立たなくなります。でも、SAWAMURAさんのような地元の会社が主体的にまちづくりを行うことで、街が盛り上がり、メインとなる事業も盛り上げることができる。そういった意味でも、SAWAMURAの取り組みはまちづくりの一つの正解例ですね。また、こうした取り組みは、もともとは若手社員の教育の一環として始まったというところも非常に興味深いです」

SAWAMURAには、マルシェをはじめ、半年や1年といった期間を費やして社内外の色々な人と協力し、形にすることが求められるプロジェクトがいくつもあります。建築業界では社員が専門性を高めて一人前になるまで何年もかかり、その分野の中に閉じこもりがちです。しかし、こうした企業やまちのプロジェクトに若い社員が参加し、経験を積むことが、学習の機会を増やし、視点を広げることにつながります。また、これらの活動を通して「SAWAMURAで働きたい」と思う学生や若い人材が増えると、この街で働く人が増えて、建設業としての下地づくりにもなり、会社の未来を担う人材を育てることができると考えています。

 

最後に、大溝という街について、宮部先生のお考えを伺いました。

「この地域は、駅からも近く利便性が良い上に、歴史的な街並みがあり伝統文化がちゃんと残っています。地元の人には当たり前すぎてその価値が理解されにくいですが、この街のポテンシャルはとても高いと思います」

建物を新しく建てて商売を始めるにはたくさんの費用がかかるので、新規参入はハードルが高いものです。しかし、空き家や古い家屋をリノベーションすれば小さな事業でも始めやすく、その街で住んでその街で何かしたいと思う人が集まりやすい環境になります。

 

「自分が住む街そのものを楽しみながら暮らせたら、幸せの指数は絶対に高くなるはずですよね」

 

この街に「行きたい!」と思う場所が増えることで、人が集まり、住む人が増え、自然とお店や遊び場が増えていくはず。
そのきっかけづくりのため、これからも私たちは人と地域をつなぐさまざまな取り組みを行っていきます。

 

Text:コマツ マヨ/Edit:SAWAMURA PRESS編集部

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