
最終更新日:2022年11月25日
従来では、取引の価格に(税別)と記載することが認められていましたが、令和3年4月1日から消費税の総額表示が義務化されました。これにより、患者は取引価格が一目でわかるようになる一方で、病院やクリニックは表示の変更について対応を追われることになりました。本記事では、消費税の総額表示に関して、医療機関における表示方法や対象の取引などについて詳しく解説します。
総額表示義務化の背景
消費税の総額表示とは、消費者に商品・サービスを提供する事業者が値札やチラシ、院内に表示する広告などに、消費税額を含めた価格を表示することです。
実は、平成16年に総額表示義務化はされていましたが、消費税が5%から8%へ引き上げられた際に「値普やチラシの表示変更の負担の軽減」を目的に、条件付きで税込価格を表示しなくてよい特例が設けられました。その条件は、表示価格が税込価格であると誤認されない対策を取ることです。
この特例の適用期間は平成25年10月1日~令和3年3月31日のため、令和3年4月1日からは総額表示が義務化されます。
医療機関における総額表示義務
総額表示義務が課されるのは、消費税の課税時業者です。課税事業者は、基準期間における課税売上高が1,000万円以上の事業者を指します。基準期間は個人事業主が前々年度の1月~12月31日、法人は前々事業年度です。
医療機関における課税売上高は、自由診療報酬や物販売上です。保険診療は消費税の非課税取引となり、課税売上高には含まれません。また、消費税の免税事業者は取引に課される消費税がないため、4月からの義務化をまたずに消費者が支払う金額の明示が必要です。
消費者に対して価格表示する際は総額表示が必要ですが、事業者間での取引は対象になりません。ただし、わかりづらい表示は後々トラブルになるリスクがあるため注意しましょう。
医療機関において総額表示する媒体
医療機関において総額表示が必要な媒体は、商品に添付する値札や広告における自費診療の価格などです。医療機関では、体温計や歯ブラシ、サプリメント、美容液などを販売することがあります。また、インプラント治療や矯正治療、美肌治療などの自費診療を強くアピールしていることもあるでしょう。これらは全て総額表示義務化の対象のため、全て価格表示の差し替えが必要です。
総額表示の例
総額表示の方法は次のとおりです。
- 総額のみ表示する
- (税込)を併記する
- うち税○○円と併記する
- 税抜価格○○円と併記する
- 税抜価格○○円、税○○円と併記する
- 税込○○円と併記する
価格がスムーズにわからずストレスを与えることは、売上の低下につながりかねません。また、税込表示義務を果たしているのかどうかがわからず、本当に税込価格なのか確認を取る手間が発生するのも避けるべきでしょう。
そのため、(税込)を併記する方法がスマートです。
総額表示に該当しない例
金額に(税抜)と併記、(本体価格)と併記、+税と併記する方法は、総額表示に該当しません。つまり、消費者に税額の計算をさせる行為が禁止されます。
総額表示しないことで起こり得るトラブル
医療機関では、インプラント治療や矯正治療など、数十万円もの費用がかかる自費診療が行われています。総額表示しない場合、患者が想定していた金額と実際の金額に大きな差異が生じるため、それだけトラブルに発展しやすいでしょう。
例えば、50万円でインプラント治療を受けられると思っていたところ、実際には税込で55万円が必要だったとします。5万円もの差が生じれば、クレームに繋がる恐れもあります。また、差額が少額だったとしても医療機関に対する信頼性が低下し、離れてしまうかもしれません。
医療機関の経営に力を入れるなら居心地が良い雰囲気作りが大切
医療機関の経営に力を入れるからこそ、令和3年4月1日から始まる総額表示の義務化に対応することが大切です。ただし、これは法律で義務付けられたものであるため、他の医療機関よりも患者が集まりやすくなるわけではありません。
競合に勝つためには、自院ならではの施策が必要です。さまざまな施策が考えられますが、中でも効果が高いのが過ごしやすい雰囲気づくりでしょう。その一貫として、待合室や診察室などをリフォームし、配色やデザイン、照明の使い方などを工夫するのがおすすめです。
まとめ
令和3年4月1日から消費税の総額表示が義務化されました。現時点ですでに制度は始まっているため、対応できていない場合はすぐにでも対応すべきでしょう。また、経営に力を入れて集患したい場合は、過ごしやすい雰囲気づくりも必要です。
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