
最終更新日:2023年01月20日
厚生労働省は、「医療DX令和ビジョン2030」の実現に向けて、「医療DX令和ビジョン2030厚生労働省推進チーム」を設置しました。このように医療DXは国を挙げて取り組んでいるものですが、具体的な内容についてご存じない方は多いのではないでしょうか。そこで本記事では、医療DXとは何かを解説するとともに、解決できる課題や推進するメリット、事例などについても詳しく紹介します。
医療DXとは
そもそもDXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称で、デジタル技術によってビジネスモデルや組織、価値提供などの革新を実現し、競争優位性を獲得することです。
それでは、医療におけるDXはどのような意味になるのでしょうか。
医療DXとは、医療や介護、保険といった各段階において発生する情報やデータをデジタル技術を用いて関係機関に共有し、予防医療や適切な医療の提供につなげることです。単なる業務効率化は医療DXの過程であり、結果ではありません。業務効率化をした結果、医療サービスに変革をもたらすことを医療DXといいます。
医療DXで解決できる課題
それでは、医療DXの推進で何が解決できるのか詳しくみていきましょう。
医療人材の不足
医療人材は慢性的に不足している状況です。
厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概要」によると、医療・福祉業界の離職者数はワースト3位です。離職率を示すものではないため、全業種の中でも人手不足が特に慢性化しているとは言い切れませんが、毎年多くの離職者が出ている現実に変わりはありません。
医療DXによって業務効率を高めることで、1人あたりの業務量が減少して人手不足を解消できる可能性があります。
アナログ手法による低い業務効率
医療業界では、従来からアナログ手法による業務効率の低さが問題となっています。1999年に電子カルテの導入が認められましたが、いまだに紙のカルテを使用している医療機関が少なくありません。
医療DXによってアナログからデジタルへシフトすることで、業務効率の大幅な改善が期待できます。
医療格差
人口が多い都市部には医療機関が充実している一方で、地方や過疎化が進む地域では医療機関の不足が問題となっています。また、過疎地は医療機関運営者の高齢化と後継者不足により、廃業も相次いでいるのが現状です。
それでいて、過疎地の住民は高齢者が多い傾向にあるため、医療の必要性が高いといわれています。医療DXを実現する手法としてオンライン診療を導入すれば、遠隔地でも診療を受けられるようになります。
医療DXを推進するメリット
医療DXを推進することには、次のメリットがあります。
業務効率が上がる
電子カルテの導入やレセプトのオンライン申請(義務化済み)、ペーパーレス化などにより、業務効率が上がります。アナログでの管理は検索性が低いため、必要な情報を瞬時に取得できません。1回の検索にかかる時間が少なくなればなるほどに時間の余裕が生まれ、医療スタッフ1人あたりの負担を軽減できます。
また、過去のデータと紐付けすることで病変の変化を容易に観察したり、AIを駆使して見落としのリスクを軽減したりも可能です。
患者の満足度が上がる
予約システムを導入すると、待ち時間を大きく軽減できます。人との余計な接触を避けることで、院内感染のリスクや心理的負担の軽減が可能です。また、情報を共有するシステムを導入すれば、同じ病気で他の医療機関を受診した際に、不要な検査や処方薬の重複などを回避できるようになります。
非対面診療が可能になる
オンライン診療を行うことで、非対面での診療が可能になります。遠隔地でも診療を受けられるようになれば、寿命の延長にもつながるでしょう。また、外出による感染リスクも軽減できる点もメリットです。
予防医療を促進できる
DXによって医療データを蓄積・分析し、同様の症状を持つ患者のデータと照らし合わせることで、予防のための行動を推測できます。予防医療は医療費削減や寿命の延長などの効果が期待できるため、国を挙げて推進されています。
医療DXの事例
厚生労働省と有名企業の医療DXの事例を紹介します。
マイナンバーカードへの保険証機能の搭載
厚生労働省はマイナンバーカードに保険証機能を搭載する取り組みを2021年10月20日から本格的に開始しました。薬剤情報をはじめとした治療に関わる情報が医療機関に共有されるため、飲み合わせや薬剤アレルギーによる健康リスクを大きく軽減できます。
ソフトバンクによるオンライン健康医療相談サービス「HELPO」
ソフトバンクが提供する「HELPO」は、医師や看護師、薬剤師の医療チームに24時間365日いつでも健康相談ができるアプリです。また、症状に適した医療機関の検索やオンライン診療ツールとしての活用など、ヘルスケア全般の利用ができます。
まとめ
医療DXは、デジタル技術の活用によって業務効率化や生産性の向上、患者の満足度の向上などを実現し、競争優位性を獲得することです。結果的に予防医療の促進や院内感染のリスク軽減などを実現できます。今回、解説した内容を参考に医療DXの導入を検討してみてください。