
最終更新日:2023年02月20日
クリニックを開業する際は、施設基準を満たす必要があります。その施設基準に関わる法律の1つが消防法です。クリニック建築でつまずくことがないように、消防法について確認しておきましょう。この記事では、クリニック開業の際に知っておきたい消防法とそれに基づいた防火管理責任者の設置などについて詳しく解説します。
消防法とは
消防法とは、火災や地震などによる被害を最小限に抑え、秩序の保持と社会公共の福祉の増進を目的として定められている法律です。クリニックには、火災や地震などが起きた際の被害を最小限に抑えるための構造や設備の設置などが求められます。
消防法で定められている基準設備
消防法においては、病床数が4つ以上かどうかで設備基準が異なります。
病床数4以上のクリニック
次の設備の設置が求められます。
- 消化器……無条件で設置が必要
- スプリンクラー……診療科目で異なりますが延面積3,000平方メートル以上で設置が必要
- 自動火災報知設備……無条件で設置が必要
- 消防機関へ通報する火災報知設備……無条件で設置が必要
病床数4未満のクリニック
病床数4未満であっても、次のように一定の条件のもとで設備の設置が求められます。
- 消化器……150平方メートル以上で設置が必要
- スプリンクラー……6,000平方メートル以上で設置が必要
- 自動火災報知設備……300平方メートル以上で設置が必要
- 消防機関へ通報する火災報知設備……500平方メートル以上で設置が必要
クリニック開業における消防法への備え
クリニック開業においては、消防法に準じた設備を設置するために、次のように対応しましょう。
まずは設計事務所に相談する
まずは、消防法に詳しい設計事務所に相談しましょう。どれだけ優れたデザインの内装でも、消防法を遵守していなければクリニック開業は認められません。内面図案が消防法に則しているかどうかを確認し、問題なければ建築・リフォームを進めていくことが大切です。
消防検査を受ける
消防検査とは、消防用器具が適切に設置されているか、避難経路に問題はないかなどを検査することです。消防検査の前に、事前相談・使用開始届の提出・設置届の提出を行います。検査前までの手続きで、クリニック開業において消防法に基づいた設備を設置していることを申告しています。そのため、検査の内容は、申請内容に基づいて本当に設備を設置しているかを確認するものです。
防火管理責任者の配置
クリニック開業の際は、防火管理者および防災管理者の選任が必要です。30人以上を収容できるクリニックへの設置が義務付けられており、それ以下の場合は設置する必要はありません。ただし、ビルのテナントで開業した場合はビル全体で30名以上となれば、防火管理者および防災管理者の設置が必要です。
防火管理者は院長がなることが一般的で、事前に防火管理講習を受けることが求められます。また、管理的・監督的地位であれば院長でなくとも選任は可能です。退職予定があると、退職の際に改めて選任することになるため、なるべく退職しない可能性が高い人物を選任しましょう。
防火管理講習は、地域の消防本部もしくは「一般財団法人 日本防火・防災協会」が実施しています。地域によって異なるため、地域の消防本部に確認しましょう。
複数階にわたるクリニックではさらに多くの設備が必要
複数階にわたるクリニックを開業する場合は、階層に応じて次の設備の設置が必要です。
- 地下3階以下……非常警報設備(放送設備付加)
- 地上3階以上……消火器具(階面積が50平方メートル以上)、自動火災報知機(階面積が300平方メートル以上)
- 地上4階以上……スプリンクラー設備(階面積≧が1,500平方メートル以上)、 屋内消火栓設備(階面積が150平方メートル以下=一般、300平方メートル以下=準耐火、450平方メートル以下=耐火)、動力消防ポンプ設備(階面積が150平方メートル以下=一般、300平方メートル以下=準耐火、450平方メートル以下=耐火)
- 地上5階以上……連結送水管(延床面積が6,000平方メートル以下)、総合操作盤(床面積が20,000平方メートル以下で消防長などが必要と認める場合に限る)
- 地上7階以上……連結送水管(すべて)
- 地上11階以上……非常コンセント設備(11階以上に限る)、スプリンクラー設備(全階必須)、自動火災報知設備、非常警報設備(放送設備付加)、総合操作盤(床面積が10,000平方メートルで消防長などが必要と認めたものに限る)
- 地上15階以上……総合操作盤(床面積が30,000平方メートル以下で消防長などが必要と認めた場合に限る)
まとめ
クリニック開業の際は、消防法に基づいて設備を設置する必要があります。消防検査で指摘されたところはなるべく早く改善し、スケジュールに遅れないように準備を進めましょう。また、信頼できる建築業者に相談しながら準備することが大切です。
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