
最終更新日:2023年05月19日
福祉施設や医療施設のほか、一般住宅でも見られるようになった「ユニバーサルデザイン」や「バリアフリー」。
いずれも、誰もが快適かつ使いやすいように設計された設備やデザインを意味するものですが、根本的な概念には大きな違いがあります。
しかし、それぞれについて、違いを理解したうえで使い分けている方はまだ少ないのが現状です。
これから福祉施設を開業したいと考えている方は、ユニバーサルデザインとバリアフリーについて正しく理解しなければなりません。
そこで、今回はユニバーサルデザインの特徴や、バリアフリーとの違い、医療施設に求められるようになった背景などについて解説します。
ユニバーサルデザインとは
ユニバーサルデザインとは、年齢や国籍、文化、性別、能力など、さまざまな個人の違いに影響されることなく、できる限り多くの人々が利用しやすいように目指して設計されたもののことです。
外に出てみると、ユニバーサルデザインを採用した設備を数多く目にするようになりました。普段何気なく使用している自動ドアや多機能トイレ、シャンプーボトルの横に施された突起のほか、一目で何に関することなのかがわかるピクトグラムもユニバーサルデザインに該当します。
ユニバーサルデザインを設けることで「この設備が利用できない」といった人を可能な限り減らせることから、近年国内外で注目されています。
ちなみに、ユニバーサルとは、「普遍的」「全体」と言った意味があり、「誰にでも利用できるデザイン」が、ユニバーサルデザインの条件であると言えます。
ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い
ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いは大きく2つです。
いずれも混同されがちではありますが、ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いについて正しく理解を深めていきましょう。
誰に向けたデザインであるか
ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いとして、まず挙げられるのが「誰に向けたデザインであるか」という点です。
ユニバーサルデザインは、すべての人に向けたデザインであるのに対し、バリアフリーは、身体的に障がいを抱える人に向けて設計されたデザインです。
例えば、バリアフリーは、車いすで移動する人に向けて、段差を解消したり、階段にスロープを設けたりします。しかし、段差を解消するために傾斜をつけたり、階段にスロープを設けたりすると、「幼児の転倒リスクが上がる」「歩行が困難な人がかえって歩きにくい」など、一方で使いにくくなってしまう事例も存在します。
ユニバーサルデザインは、対処を身体の障がい者に限定しないため、文字通り「すべての人のため」にデザインされるのです。
バリアに対する根本的な考え方
バリア(生活上で支障となるもの)に対する根本的な考え方の違いは、ユニバーサルデザインとバリアフリーの大きな違いです。
ユニバーサルデザインは、「はじめからバリアを作らないこと」に重きをおいているため、施設を設計する段階ですべての人に向けたデザイン作りが採用されます。
バリアフリーは、「バリアを除去すること」が基本的な考え方なので、現時点で誰かにとってのバリアをなくすよう努めます。
上記のように、ユニバーサルデザインと、バリアフリーは根本的な部分から考え方が異なることをきちんと理解しておきましょう。
ユニバーサルデザインが医療施設に求められるのはなぜ?
ユニバーサルデザインが医療施設に求められるのはなぜなのでしょうか。
ここからは、ユニバーサルデザインが医療施設で求められる理由を解説します。
医療施設を利用する高齢者が増えた
高齢化社会に伴って、高齢者が医療施設を利用することが増えてきています。車いすや杖を利用している方も多いため、段差のない、手すりのあるなどのユニバーサルデザインが必要になってきます。
障がい・病気を抱えた人が利用する
身体的な障がいや病気を抱えた人たちも医療施設を利用することがあります。例えば、視覚障がい者にとっては、点字や音声案内が必要になります。また、聴覚障がい者にとっては、手話通訳者や字幕が必要です。こうした配慮がなければ、医療サービスを受けにくくなってしまうといえるのです。
医療機関側の使いやすさも求められている
医療施設を利用する人だけではなく、来院した患者のために現場で活躍するスタッフの使いやすさも求められていることから、ユニバーサルデザインが求められるようになりました。
実際、現場ではベッドやワゴン、機材などさまざまなものが移動するうえに、たくさんのスタッフが行き交うものです。
誰にでも使いやすくデザインすることで、現場で働く人たちがもっと速やかに対応できるようになるといえるでしょう。
おわりに
本ページでは、ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いや、医療機関で求められている理由などについてご紹介しました。
医療機関で求められている背景には、いろいろな事情がありますが、いずれにせよ「すべての人のため」であることに違いはありません。
医療施設の開業を検討している方や、建築予定の方は、ぜひ今一度ユニバーサルデザインへの理解に務めてみてはいかがでしょうか。