最終更新日:2023年10月30日
医療継承・承継を検討している方にとって、必要な手続きや費用について気になっている方は多いのではないでしょうか。親族内での継承・承継となることから、一般的なM&Aとは異なる手続きとなります。
そこで、今回は医療継承・承継を視野に入れている方へ向けて、必要な手続きや注意点などについて触れていきます。
そもそも医療継承・承継とは
まずは、医療継承・承継について改めて理解を深めることが重要です。一般的なM&Aとは何が違うのか、どのような継承・承継先があるのか、などについて見ていきましょう。
既存の医療機関を譲り受けた開業スタイル
医療継承・承継とは、既存の医療機関をそのまま譲り受けて、開業することを指します。
新規開業の場合は、空いている土地に建物を建ててクリニックとして開業したり、テナントと契約して開業したりすることが一般的です。
一方、医療継承・承継であれば、すでにクリニックとして経営されていれば、土地探しや開業先を探すことなく開業が可能です。
継承・承継先は「親族間」「第三者」「他の医療法人」
医療継承・承継先としては、親子間が多いものの、他にも「第三者」や「他の医療法人」などがあります。医療継承・承継は必ずしも親族間のみというわけではありません。
ちなみに、親族間で医療継承・承継する場合は「生前の医療継承・承継」「相続での医療継承・承継」の2パターンがあります。余裕を持って親族に医療継承・承継をしたいなら生前での医療継承・承継、不測の事態によって相続が必要となった場合には相続での医療継承・承継が一般的です。
医療継承・承継で必要な手続き
医療継承・承継を進めるにあたって、必要な手続きは以下の通りです。
・継承・承継先の選定
・基本合意書の締結
・デューデリジェンスの実施
・最終契約の締結
・引継ぎ
基本的に専門家主導のもとで医療継承・承継を進めていくことが多いです。まずは信頼できる専門家に相談して依頼者側の希望などをすり合わせていきます。
医院の評価を行い、譲渡金額を算定したり、継承・承継先を選定・交渉したりと、進めたうえで基本合意書の締結となります。
デューデリジェンスによって発覚した問題や医院の現状をふまえ、最終交渉を行い、双方の合意があれば最終契約の締結といった形で完了です。
引き継ぎ完了後は、承継者が譲渡価格を支払ったうえで、経営権の移転を行います。とくに問題がなければ、これで医療継承・承継は完結です。
医療継承・承継のための費用
医療継承・承継にかかる費用は、結論からいうと継承する医院の売り上げによって異なるのが現状です。どれくらいの規模の売り上げを実現しているのかで、医療継承・承継の費用は異なってきます。
実際、相場を見てみると1,500万~5,000万円と差が大きいため、まずは医院の売り上げを把握したうえでおおよその目安を想像する必要があります。
とはいえ、医療継承・承継にかかる費用は、継承元が希望価格を提示したり、専門家との協議のうえで決定することが多いです。専門家や継承先・継承元などと相談を重ねたうえで納得できる費用で医療継承・承継できるように進めていきましょう。
医療継承・承継における注意点
医療継承・承継では、継承先・継承元それぞれで意見に相違があると、なかなか手続きを進められない点に注意しましょう。とくに、継承後の治療方針を従来とは異なる内容に設定する場合、衝突が起きやすいのが難点です。
また、場合によっては医療継承・承継後に患者が離れてしまったり、新たな治療方針に賛同できないスタッフの離職を招いたりするリスクもあるため、慎重に話し合うことが重要です。
医療継承・承継のメリット
医療継承・承継を進めるうえで、どのようなメリットがあるのかは気になるところではないでしょうか。ここからは、医療継承・承継のメリットを解説していきます。
開業時の初期費用を安価に済ませやすい
医療継承・承継のメリットとして、まず挙げられるのが「初期費用を抑えやすいこと」です。
すでに、既存のクリニックとして経営されていれば、設備や機器などはそのまま引き継ぐことができます。仮に古くなっている設備があり、一部を新たに導入することとなっても、新規開業と比べるとコストは低い傾向にあります。
事業の見通しが立つ
これまでクリニックとして経営していた医院を引き継ぐため、事業の見通しが経ちやすいのがメリットです。新規開業では「どれくらいの患者さんを確保できるのか」などは不透明で手探りの経営になることも多いですが、既存クリニックの医療継承・承継であれば、過去の売り上げからある程度見通しを持って経営を継続することが可能です。
おわりに
本ページでは、医療継承・承継について解説しました。新規開業と比べると、コストも手間も最小限に抑えつつ、開業できるのがメリットです。
しかし、一方で「手続きが多い」「継承時に費用がかかる」などの注意点もあります。専門家に介入してもらいながら、継承元・継承先の双方が納得できる形で進められるようにしていかなければなりません。
今回ご紹介した内容を参考にしながら、スムーズな医療継承・承継を目指していきましょう。